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吉村ゴンゾウあわー

自作のショート・ショートや読書感想などをアップしています。気負わず適当にやります。テーマは「中途半端を恐れない」。

勧悪懲悪のすごい奴

暗礁 上 (1) (幻冬舎文庫 く 10-1)暗礁 上 (1) (幻冬舎文庫 く 10-1)
(2007/10)
黒川 博行

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 会社の大先輩から、よく本のお下がりを頂いている。読むことが好きな割りに読書量が少ないのはお金がなくて本が買えないからだと誤認識していただいている背景もあって、私が買いそうもない本をたくさん読ませてくれるので、ここ数年で私の読書の幅はうんと広がった。広がったとは言え、せいぜい中高校生レベルから脱出できたかどうかかもしれないが。
 このほど新しく出会うことになったのが、黒川博行作品。先輩からは「むちゃくちゃ面白い」との前置きをもらってから読んだのだが、まさに聞きしに勝る面白さ。シリーズの3作目ということらしいのだが、特に支障なく最後まで読めた。
 特筆すべきは恐ろしいほどのリアリティだ。現実に世界の仕組みがこの小説の通りになっているのではないだろうかと真剣に考えてしまうほど、実に詳細に構造的に社会の一面を切り取っている。ある意味人間らしいともいえる醜くさを登場人物のほぼ全員が持っていて、特に威張り腐っているお金持ちがどれほど多く、どれほど汚いかを執拗に描くその筆致にはおぞましいほどの恨みさえ感じるほどだ。
 舞台の中心地は大阪、そして奈良と兵庫の神戸。地名や道路などの記述も詳細で、地理関係もリアルそのもの。登場人物が話す関西弁も地域ごとに微妙な使い分けがあり、気持ちの悪い妙な関西弁は一言も出てこないという徹底振り。こうした細やかなリアリティが、作品の中心テーマとなる本当の嘘を巧妙に隠しており、痛快無比な冒険活劇であると共に、上質なミステリーとなっていることを賞賛したい。
 ざっくりといえばヤクザ系の小説だが、堅気の青年と超イケイケのヤクザがコンビを組んで、漫才さながらの掛け合いを展開しながら、お金儲けの悪巧みを進めていくさまはとにかく楽しい。口だけが達者でなんのとりえもない堅気の主人公と、頭が切れ知識もお金も豊富に持っていてしかも喧嘩で負けたことのないイケイケのヤクザ。欲が先に立って何にも怖いものがないヤクザの無茶苦茶な言動に、窮地に追い込まれて怖いものだらけの堅気が振り回されるだけでも面白いわけだが、それだけではない。
 この堅気の主人公が人並みに欲もあってなかなかふてぶてしく、人間的過ぎてかっこいいところが一つもないのになぜか肩入れしてしまいたくなる愛嬌のある人物なのだが、時に鋭いことを言って、ヤクザなどの悪人の代表格を煙に巻いたりやり込めたりするのだ。一番弱い立場のはず金も権力も持たない堅気の人間が、正義を立てに極悪人にほんの些細な反抗をして見せるのである。ここが面白い。ヤクザ世界の理屈や汚れたお金持ちの理論は一般の堅気には通用しない。道理や正論の前では暴力や権力も一瞬のためらいを見せる。ま、一瞬だけど、そこに爽快感を感じる。
 文庫本にして上下巻の長編だが、冗長な感じは一切なく、息もつかせぬ急展開が連続する。複雑な人間関係も詳細な説明があり安心して読める。氷山の一角を吊り上げようとしてなかなか上げられず、ようやく全貌が姿を現すと地面と繋がっていた、というような、とにかく読み応えがあるミステリーとなっている。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

コメント

うらやましい。そんな先輩がいるなんて。
なんか面白い本あったら教えてね。
ちなみに私は今、アンジェリーナジョリー主演で映画化された「マイティーハート」を読んでます。
http://www.mh-movie.jp/top.html
9.11テロ直後にテロに拉致され殺されたジャーナリストの旦那について、嫁さんがお腹にいた赤ちゃんのために、父親の勇敢な姿を描いた本です。
知ってたらすんません。

  • 2008/01/11(金) 13:04:48 |
  • URL |
  • かずきんぐ #VEIOABK.
  • [ 編集 ]

面白そうですね。読んでみたいです。
リンクを開けたら夏木マリさんのコメントが載ってましたが、
主演の人が夏木マリに激似で思わずワラタ。

お勧めは「鏡の法則」ですかね。
本を買わずとも、ネットでほとんど読めるので◎。
人にあげるために私は3冊購入しました。
ある先輩にされた「助言」とあまりに酷似していたたので
本人に確認しましたが、本人はまったく知らないといってました。
だけども、何かしら会い通じるものがあるのでしょう。
そう思ってます。

  • 2008/01/15(火) 14:31:39 |
  • URL |
  • ゴンゾー #-
  • [ 編集 ]

ほんまや、そっくりや!!!

そういえば先日、やっと読み終えました(同時進行で色々読むから1冊が終わるのが遅い;;)。著者は仏教徒(SGI)で、殺された旦那はユダヤ人、警察やサポートしてくれた人はキリスト教徒やヒンズー教徒。これらの思想・主義が異なる人たちが一丸となってテロと戦っていたのには圧巻でした。出産シーンは号泣です。世界中から送られてきた手紙は人々の善性に満ち溢れていて胸がいっぱいになりました。是非おすすめします。

「鏡の法則」は必ず読みます。が、そのまえにゴンゾーはんから送ってもらったやつを先に読みたいと思ってます。

  • 2008/01/30(水) 10:57:30 |
  • URL |
  • かずきんぐ #VEIOABK.
  • [ 編集 ]

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